絶滅危惧種?

3週間ほど前、草むしりをしていた時のこと。年長さんぐらいの女の子と、お母さんが脇を通った。目が合って、お母さんと軽く会釈し、2人は通り過ぎた。

ところが、何故か、その声がまた近づいてくる。若い母親が地面を指さして、「ねえねえ見て、これ、蚊取り線香っていうんだよ」・・・女の子は、興味なさそうに、私の横を一瞥してスキップするように戻っていった。そうか!見たことないか。物凄く刺されやすいたちなので、傍らに置いて作業していたが、今の子供達にとって、蚊取り線香は、もはや「生活用品」の範疇に入っていないのだろう。

確かに、ワンプッシュで12時間?だか24時間だか、蚊が来ません、などという商品もあるらしい。ドアノブや物干しに、薬剤の虫よけをかけているお宅も多い。世の中は、手間を省く方へ、楽な方へと動いている。

若い頃のこと、夜勤の時に、外国人の入院患者さんから、ナースコールが鳴る。

「Mosquito bites me!」・・・おお、蚊はbitesするんだ、と思いつつ、当時ポピュラーだった「電子蚊取りマット」を持って行ったものだ。(今、考えると、結構怖い。)世の中の「蚊よけ製品」はどんどん「進化」したが、今、使っている蚊取り線香は「天然除虫菊成分だけ」の物である。時代に逆行している。「マット」のあたりから、蚊と一緒にどうやら私もイチコロになると気づいたからだ。

カレンダーなどのイラストで、夏の風物詩として描かれる蚊取り線香。これからの絵は、もしかしたら、あの、「浅い青いV字模様のドアノブホルダー」にとって代わるかもしれない。そうなった頃、一体世の中はどうなっているのだろう。

パラオ語で、「パニックになるほど忙し」かったり、「頭が混乱しそうになるほど大変」なのを、「アタマ、カトリセンコー‼」と言うのだそうである。嘘みたいな本当の話だ。よく、悩んでいる人のイラストの頭の横に、こんがらがった毛糸の塊みたいなものを描く。渦巻きがそれということらしい。本物の蚊取り線香が絶滅危惧種でも、その名前が、海の向こうで生きていた。

化学薬品ほどにはきつくないお線香にも、是非生きのびてほしい。そういうものが無いと困る人が、今後、きっと増える。

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